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全学教育講義「専門志向者のための物理学I,II」について

この講義は、将来、物理学と深く関わる専門の学部学科に進学を希望する学生のための講義です。

普通の物理学I,IIの講義では扱わない内容を取り上げます。内容は少し高度ですが、難しくならないように講義します。
1年生が専門に進学した時に感じるギャップを埋める意味もあります。

1年生がすでに勉強している数学の範囲、微分積分ベクトルを使って物理学をどのように理解できるのかを1年生でも理解できるように講義します。これらの数学を物理学を理解するための言葉としてどう使うのかを、基本となる考え方から講義します。この基本となる考え方は、学部へ進学してからも応用できると思います。僕の場合は、こうした講義がなかったためにかなり苦労しました。ですので、受講する学生は、こうした内容に興味と関心と熱意を持っていることを前提にしています。また、毎回授業内容の復習を兼ねたレポートが課せられますので、履修する学生には努力も求められます。

この授業に対して受講した学生から高い評価をいただきました。それは
こちらのホームページ見ることができます。履修するかどうかを決める参考にしてください(残念ながらこのページは変更になったようですので、代わりに学生の感想をこのページの後ろの方に載せました)。

この講義資料は
前期 物理学I ( 専門志向の物理学ー力学I)
後期 物理学II(専門志向の物理学IIー電磁気)
にあります。予習に活用してください。前期は力学を中心に講義します。後期は電磁気学を講義します。いずれも、各分野全般を網羅すると言うよりも、専門的に学ぶ上で必要となる基本的な考え方や理解の仕方がよくわかるように、テーマを取り上げ、比較的ゆっくり講義します。とはいえ、1年生には難しいので、授業をよく聞いて内容を理解するように努めてください。役に立つ公式を覚えて、問題の解き方を覚えると言うやり方では対応できません。それは受験には役だったかもしれませんが、物理学を専門で活用する学部では通用しません。履修したら最後まで頑張ってください。

以下、参考のために学生の評価の一例を載せます。
以下は前記の力学の講義についてです。

学生 A
本講義を通して、運動学やエネルギー積分など、これまで漠然とした理解にとどまっていた概念を、最も基本的な定義を出発点として、原理原則・数式に基づいて正しく理解することができたと感じている。
特に、極座標による解析は直感的な理解から離れた数式表現が用いられることもあり、初めて講義で扱った時は理解に時間を要した。しかし今では動径方向、角方向それぞれの単位ベクトルの意味や、それらを用いた運動方程式・ポテンシャルの表現など、以前よりも運動の現象を解析するための考え方を抽象化することができるようになったと実感している。
これから先、自分は情報科学・人工知能を専攻し、機械学習・ベイズ統計などを用いた自然科学・物理現象のシミュレーションや解析などをテーマとした研究を行いたいと考えている。その際には本講義で重視してきた定義を出発点とした議論や、原理原則に基づいた式変形などを念頭に置いて取り組みたいと考えている。考慮すべき条件や公理・定理など、今以上に検討すべき要素が多くなり、困難に直面することもあると思うが、研究において重要な「正当性」「妥当性」は貫くことができると考えている。
要望・その他
こうした意味で、本講義は物理の分野に限らず、アカデミアとして重要な要素が多く含まれたものであったと感じており、大変満足しています。羽部先生には、これからも可能な限りこの講義を開講いただき、学問としての正しさの重要性をこれからの大学生にもお伝えいただければと思っております。

学生 B
上半期の講義を通して、物理的な知見を広げるのみならず、その思考法をも伝授していただきました。
偏微分を用いた座標変換後の基底ベクトルの導出ではただ偏微分を実行するのではなく、内積するなどといった操作や図形的な解釈を行いながら、その物理的な意味を考えるといった流れで紹介されました。理論体系を組み立てる流れや、角運動量vectorという新たな概念の導入が「妥当かどうか」といった思考法は、二次元極座標系のみならず今後物理学を楽しむ上で、他の分野の理解や新理論の研究においても大きな助けになると確信しています。
はじめは極座標系に抵抗感がありましたが、講義を通じて一歩ずつ理解を進めることができ、現在では必修科目の物理学Iで扱われた回転運動の運動方程式を極座標系をもちいて導出することができました。スピンや惑星運動といった回転と深く関係した極座標系は、中心力が働くことによって保存される角運動量やその時間微分トルクを説明する上で、欠かせないツールであると理解できました。
また、運動方程式のエネルギー積分自体は存じ上げていましたが、ある一方向のみを考えることでベクトルをスカラー表記したものでしか導出したことがありませんでした。講義ではより一般性を持たせて、v(scaler)をかける代わりにベクトルの内積で導出したことでさらに理解が進みました。仕事やポテンシャルの議論もはじめてで、「非保存力が仕事をしないときには、力学的エネルギーは保存する」つまり「保存力では力学的エネルギーは保存する」ことを知っているだけでしたが、「仕事が積分の上端下端にのみ依る、つまり経路に依らない状態関数であるときにはそのような仕事を為す力をポテンシャル力といい、ポテンシャルを定義できて、力学的エネルギーは保存する」という理解まで進めることができました。このような理論体系やナブラ∇は参考書を読むだけではなかなか身につかなかったため、とても助けられました。
下半期で扱われる電気磁気学でも、ナブラやベクトル積を利用することでさらに理解を進め、引き続き物理学をエンジョイできることを楽しみにしています。上半期は大変お世話になり、ありがとうございました。下半期もどうぞよろしくお願いいたします。

学生 C
位置と速度と加速度の関係の導出から始まり、力学的エネルギー保存の式に至るまで理論的に理解することができ、物理への理解が深まった。特に座標系に関して詳しく何度も説明があり、繰り返し式変形を追っていくうちに意味が理解できるようになった。また、座標系では慣れない𝑒𝑟や 𝑒𝑥といった基底ベクトルでの数式表現についても最後には疑問を持つことなく使用できるようになった。座標系に関してさらに、R(r+dr,θ+dθ)-R(r,θ)
の計算において同じものを足したり引いたりして求めたものが、ポテンシャルエネルギーの計算の際に再使用されたことで物理の定石、定番の式変形に触れられた気がして良い気分であった。総じて 2年以降の学部内容(機械)への礎とすることができたと思う。
要望:
ポテンシャルエネルギーに対する説明が、私の理解不足でよくわからなかったので細かくしてほしい。講義では式変形を行い、ポテンシャルエネルギーを定義していた。一方でポテンシャルエネルギーが何であるかはあまり理解ができなかったため、そこの詳しい説明が欲しかった。

学生 D
今回の授業を受けて、
大学での物理学では、公式を暗記して数式を解いていた高校物理とは異なり、物理の定義や法則などの考え方や本質を深く理解することが重要だということを理解することができました。これらを意識することは、物理学だけでなく様々な分野を今後研究する上でも必要な視点だと思いますので、ここで得た学びをここだけで終わらせることなく、活用していきたいと思います。
授業の内容に関しては、2次元極座標での運動の記述やベクトル積など、はじめて学ぶ分野もありましたが、図示での視覚情報と数式の2通りの理論で授業内容が理解しやすく、レポートや授業始めの復習で理解を深めることができ、とても勉強になりました。