2009年度 第39回 天文天体物理若手夏の学校

星間現象分科会 アブストラクト

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ポスター講演

X線による銀河系中心分子雲帯の3次元構造

劉 周強

銀河系の力学中心Sgr A*(@8.5 kpc)の周囲には、銀河系ガス全体の約10% が集まっている銀河系中心分子雲帯 (CMZ; ~3 x 10^7 太陽質量) が存在している。Sgr BとSgr C は、CMZの東部と西部を占める最大級の分子雲複合体である。電波観測による速度分布 (L,V) は、回転曲線のモ デル不定性が大きいゆえ、これらの分子雲の奥行き分布を決めることは難しい。すなわち「分子雲がSgr A*より手前にあるのか、奥にあるのか」という単純、しかし銀河系中心構造研究上の重要な問題は未解決のままである。 X線による銀河中心研究の重要な成果は、(1) ヘリウム状電離鉄Ka輝線 (6.7 keV) の観測から、Sgr A*を中心に300 pc以上にわたる、一様な高温プラズマ (10^8 K)の存在の確定 (Koyama+2007)、(2) 分子雲の中性鉄Ka輝線 (6.4 keV) の観測から、Sgr B2、M 0.74、Sgr B1など のX線反射星雲の解明 (XRN: Koyama+2007; Nobukawa+2008) である。私は、X線放射の空間分布に注目したバンドイメージの解析から、Sgr B付近では「高温プラズマ放射が弱い、6.4 keV輝線が強い」 という反相関を発見し、高温プラズマのX線放射が (手前の) 分子雲に吸収されていることに突き止めた。さらに詳しいスペクトル解析を行うことより、高温プラズマを分子雲より前方と後方の2成分に分離することに成功した。両者の放射強度比=(前方強度) /(前方強度+後方強度)を位置変数として、銀径方向に沿って銀河系中心付近の分子雲 の奥行き分布を定量的に評価した(Ryu+2009)。その結果、CMZが「Sgr A*に対して、Sgr Bがやや手前、Sgr Cがやや奥」という傾いたバー状な構造をしていることを初めてX線で解明した。

XMM-Newton衛星によるCygnus superbubbleの軟X線観測

戸塚 晃太

Cygnus superbubble(以下CSB)はHEAO-1衛星により発見された軟X線拡散天体である。この起源には多くの説があり、現在のところOB associationや超新星残骸、分子雲などの重ね合わせという説が有力である。X線帯域においてHEAO-1衛星による観測以降、ROSAT衛星による全天サーベイ観測やASCA衛星による一部の領域の観測結果が報告されているが、詳細なスペクトル解析は行われていない。今回、広い有効面積を持つXMM-Newton衛星のアーカイブデータの解析を行った。その結果、CSB内の各領域から吸収や温度等の情報を得ることができた。また、CSBのEAST領域内の視野(有効観測時間:15 ksec)からは、他の視野と比べて様々な強い輝線を検出した。この領域にSNRは存在しない。本公演では、我々が求めた吸収や温度等のパラメーターと他の物理量との関係について議論する。

暗黒星雲の遮蔽による可視光宇宙背景放射の測定

家中 信幸

可視光宇宙背景放射には赤方偏移10から現在までに宇宙に放射された光が記録されており、銀河や活動銀河核の形成、あるいは宇宙大規模構造の成長を考察するための重要な情報が含まれている。この背景光を測定する試みは1970年代から行なわれているが、背景放射に比べて圧倒的に強い前景光(大気の夜光、黄道光、銀河拡散光)に妨げられて、未だに確かな測定結果は得られていない。我々は、暗黒星雲の遮蔽効果を利用する方法(Mattila 1979)と、遠赤外線の観測を組み合わせることによって可視光宇宙背景放射の測定を行なっている。本発表では我々の観測から明らかになった、銀河拡散光と遠赤外線の相関および、その結果から見積られる可視光宇宙背景放射の強度について報告する。

Observation of Sub-arcsecond scale outflow associated with Massive Young Stellar Objects

元木 業人

近年大質量星形成過程における原始星から母体コアに対するエネルギーフィードバック機構の1つとしてアウトフローを介した相互作用が注目されている。 一般にアウトフローは天体ごとに様々な形状を持っていることが知られており、原始星の進化段階に沿った形状変化のシナリオが提唱されているが、こうしたシナリオを観測的に検証するためにはH$_{2}$Oメーザー源の高分解能観測が有効である。 アウトフローによるフィードバックの比重が大きいごく若い天体の場合、アウトフローの空間スケールは一般にsub-arcsecond スケールであり、Very long Baseline Interferometer (VLBI)による観測が威力を発揮する。 本講演では大質量星形成におけるアウトフローの役割について紹介するとともに、我が国のVLBIアレイであるJVN / VERAを用いたH$_{2}$Oメーザー観測の結果なども紹介する。

3次元多重格子輻射流体シミュレーションによる低質量星形成の研究

富田 賢吾

星形成過程は次世代大型観測計画ALMAの重要な対象であり、観測と比較できる精密な理論モデルの構築が強く求められている分野である。本研究では多重格子磁気流体シミュレーションコードに流束制限拡散近似に基づく輻射輸送計算を実装し、これまでよりも現実的にガスの熱的進化を取り扱うことができるコードを開発した。このコードを用いて低質量星形成の初期段階であるファーストコアの形成の計算を行った。その結果、初期は等温的に重力によって収縮しある程度高密度になると中心に断熱的なコアが形成され以後降着で進化するという大筋の描像はこれまでの研究と変わらないが、(1)外層は中心部からの輻射で加熱されて高エントロピーになる (2)初期に回転がある場合、円盤内のエントロピーは回転してない場合よりも低くなる などの違いが見えてきた。前者はファーストコアの観測的性質に、後者はファーストコアの安定性・分裂の議論において重要となる。

宇宙ジェットと星間物質との相互作用による分子雲形成

岩月 傑

Yamamoto et al.2008(PASJ,60,715-729)、石神真慈,2008,修士論文、中村雄一,2009において、いくつかの分子雲(SS433、MJG348.5、MJG23.8、MJG347.5、MJG359.5)についてその物理量やタイムスケール等の議論から、宇宙ジェットと星間物質との相互作用によって形成された可能性が示唆された。本発表ではこれらの天体に対するNANTEN2電波望遠鏡による$^{12}$CO(J=2-1),$^{13}$CO(J=2-1)輝線の詳細観測から得られた知見に加えて、いくつかの新しいジェット候補天体についてその物理的特性を議論する。

口頭発表

「すざく」による散光星雲M17付近の拡散X線放射の観測

石田 光宏

我々は、まだすざくで見られていなかった拡散X線放射領域を観測した。XIS検出器(0.2〜12 keV)で、拡散領域の全貌を見ることができ、大きさが約17'であると分かった。スペクトル解析の結果、この成分は希薄な熱平衡プラズマモデルで再現でき、温度と元素組成比は場所によらず一定でそれぞれ0.25 keV,太陽組成の0.1〜0.3倍であった。これらの特徴から、この拡散放射起源は超新星残骸とは考えにくいので、星風衝突によると示唆される。さらに、HXDのPIN型半導体検出器(10〜70 keV)からも有意な検出を得た。本講演ではこれらの詳細を報告する。

X線天文衛星「すざく」を用いたG359.1−0.5の観測

大西 隆雄

G359.1-0.5は電波で発見され、ROSATがX線を検出した超新星残骸である。「あすか」GISにより、シリコン(Si)、硫黄(S)の非常に強い輝線を持つ熱的プラズマであることが明らかになった。我々は2008年9月に「すざく」を用いたG359.1-0.5の観測(〜50 ks)を行った。「すざく」XISによるX線スペクトルでは、シリコン(Si)のヘリウム状電離Kα輝線(〜1.84 keV)、水素状電離Kα輝線(〜2.0 keV)および硫黄(S)のヘリウム状電離Kα輝線(〜2.47 keV)と考えられる輝線を初めて分離、検出した。さらに、2.7〜2.8 keVに盛りあがった構造を発見した。この構造はSの水素状電離輝線(2.62 keV)では説明できず、超新星残骸に典型的な衝突電離平衡プラズマでは見られない。本講演では、発見した構造が検出器起源でないことの検証、およびその物理的起源の考察の結果を報告する。

X線天文衛星「すざく」による超新星残骸Velaの断片B,C,Eの観測

吉井 理恵

超新星残骸(SNR) Velaは、距離250pcの位置にある年齢1万年程度の重力崩壊型SNRである。過去のROSAT衛星の観測によって、SNRのメインシェルより外側に突出した断片状の構造が計6個(A-F)発見されていた(Aschenbach et al. 1995)。それらの形状から断片の起源は超新星爆発による爆発噴出物と考えられていたが、一部(AおよびD)を除き詳細な重元素組成が知られておらず、その確証は得られていなかった。そこで我々は、高いエネルギー分解能を持つ「すざく」によって断片B,C,Eの観測を行い、スペクトル解析を行った。その結果いずれの断片においても、O,Ne,Mgの組成比が太陽組成比より高いことが分かった。このことから、これらの断片がいずれも親星の炭素燃焼領域からの爆発噴出物であることが確定した。今回の発表では、これら結果について詳しく報告する。

「すざく」による1E 1740.7-2942の観測

中島 真也

我々は「すざく」を用いて1E 1740.7-2942(Great Annihilator)の観測を行い、その周囲に新たな構造を発見した。それは(1) 6.4 keV輝線バンドのみで見られるjet状の構造および、(2) 2.45 keV輝線バンドで見られるdiffuseな構造である。 (1) このjet状構造は周囲よりも6.4 keV輝線が強く、その等価幅は〜1 keVであった。6.4keV輝線の起源の一つにGreat Annihilatorからのjet中の電子/陽電子による中性鉄原子の衝突電離が考えられる。その場合、電波で観測されたjetが10倍の距離にまで伸びていることになる。 (2) 2.45 keV輝線は典型的に1000万度のプラズマガスから放射される。このようなプラズマの起源の一つとして超新星残骸が考えられる。 本講演では新しく見つかったこの2つの構造の解析結果について詳しく報告する。

XMM-Newton衛星によるHerbig-Haro80/81のX線観測

鵜澤 明子

我々はHH天体の中でも最もX線で輝いているHH80/81に着目し観測を行った。HH80/81は銀河中心方向に1.7kpc離れた活動的な星生成領域にあり、親星であるIRAS18162-2048,MRR14からのエネルギーによって輝いている天体であると考えられている(Marti,Rodriguez,&Reipurth et al. 1993)。一般的にHH天体のほとんどは親星から0.5pc以内に位置しているが、HH80/81はそれぞれ3.1pc、2.5pcとかなり離れている。このことと高い光度が関係あると考えられている(Heathcote,Reipurth,&Raga et al. 1998)。 今回我々は2003年09月14日にXMM-Newton衛星でHH80/81の観測を32.9ksで行い、広い有効面積から統計の良いスペクトルデータが得られた。本講演ではXMM-Newton衛星によって得られた解析結果について報告する。また過去に行われたChandra衛星の観測結果との比較も行う。

Subaru/COMICSを用いた系内compact HII領域M17における中間赤外分光観測

高橋 安大

星の材料となるダストの進化過程の解明は極めて重要な課題のひとつである。ダストは星の一生の下で様々な変化を受けるが、今回は強輻射場でのダストの変質に着目した観測を行った。ターゲットは、地球から比較的近い距離にある大質量星形成領域M17で、SUBARU/COMICSを用いて分光観測した。スリットは赤外のcoreからnebulaeにかけて当て、NLで分光した。nebulae部分では PAHと思われる11.2μm featureが見えた。一方、[SIV]/[NeII] や[SIV]/[ArIII]が非常に大きく輻射が硬い領域である赤外coreでは、9μmを peakとする半値幅1μmの非常にbroadな対称bandを発見した。これはPeeters et al.(2005)で報告されている featureと特徴がよく似ている。我々はさらにこの9μm band がどの範囲に存在するかを調べたところ、UIR bandとは分布が異なり、赤外core近傍にのみ存在し、およそ〜0.015pcであった。これはこのbandキャリアが非常に硬い輻射場でのみ作られることを示唆している。 9μm bandはM17を含めIRAS18434など4つの大質量星形成領域で報告があるが、そのキャリアについては分かっていない。今後実験室データとの比較などを通してそのキャリアの性質や生成過程を解明することが重要である。

21cm吸収線による構造形成前の原始水素ガスの断層撮影

永田 久美子

21cm線は、銀河系の渦巻き構造の理解や、星間物質の解明などにおいて重要な役割を果たしている。この21cm線を、宇宙論の分野に応用できないだろうか。 現在の宇宙には、銀河、銀河団、銀河群…などの階層構造が見られる。これらは、Inflationによって与えられる宇宙初期における密度ゆらぎが、重力的に成長することでできあがったと考えられている。そこで今回、この密度ゆらぎの理解に不可欠な原始水素ガスに焦点をあて、その分布の観測について検討した。 星形成以前の原始中性水素ガスの分布を、21cm線を用いるという今までにない手法で観測したい。この話の本質は、CMBとCosmic Gas, Spinの温度がそれぞれ別々の熱的発展をすることにある。CMBは原始水素ガスによって、21cm線吸収が起こり、その輝度は減衰する。この吸収線を観測することにより原始水素ガス分布を調べられないだろうか。

超新星残骸に付随する分子雲のミリ波サブミリ波による観測的研究

佐野 栄俊

RX J1713.7-3946はシェル状に広がった$\gamma $線やX線が観測された、周辺分子雲との相互作用が示唆されている超新星残骸(SNR : Supernova Remnant)である$^{1) 2)}$。この相互作用を解明することは宇宙線陽子の起源を探る上で重要である。近年「なんてん」による$^{12}$CO($J$=1-0)の観測で、分子雲とX線の空間分布における良い相関からSNRとの相互作用が示唆され、分子雲ピーク方向の高励起線観測でもこの結果は支持された$^{3)4)}$。我々は周辺分子雲の物理状態を更に詳細に探るため、ミリ波サブミリ波望遠鏡NANTEN2を用いて$^{12}$CO($J$=2-1,4-3)、$^{13}$CO($J$=2-1)の観測を行った(Horachi 修士論文 2008)。これらの観測結果と$^{12}$CO($J$=1-0,3-2)の観測データや$\gamma $線及びX線との比較も行い、周辺分子雲とSNRとの相互作用を強く支持する結果を得た。

H${}^{13}$CO$^{+}$(J=1-0)の分子輝線を用いた$\rho$ Oph分子雲コアの解析

鎌田 悠平

NRO45m鏡のH${}^{13}$CO$^{+}$(J=1-0)の輝線を観測したアーカイブデータを使用し,Clumpfindアルゴリズム(Williams et al.1994)を用いて$\rho$ Ophで68個の分子雲コアを同定した。同定したコアの半径,質量,速度分散を同じ分子輝線で観測したOrion A分子雲コアと比較する。その際,Orion Aは$\rho$ Ophよりも距離が約4倍遠いため,実空間における分解能を揃えたデータを人為的に作り,比較した。その結果,物理量がどちらのコアにおいても同程度となった。また,Orion Aのコアの平均密度はH${}^{13}$CO${}^{+}$(J=1-0)の臨界密度を有意に下回っており,分解しきれていない領域の存在が示唆される。従ってコアの物理量の比較には,実空間における分解能に注意する必要がある。本発表はMaruta et al.(2009)のレビューである。

星形成過程における質量の決定法およびオリオンA巨大分子雲へのその適用

三浦 智也

星形成過程における質量降着から、星の質量を決定する理論を紹介する。stellar coreはcloud coreからのinflowによって成長する。これは数値計算により裏付けられている(Nakano T., Ohyama N., Hayashi C. (1968)など)。さらに、Shu F. H.(1977)ではstellar coreへのinflowが発見されている。それゆえ星の質量は、stellar coreへの質量降着が止まったときに固定される。質量降着を止める要因としては、星からのmass outflowとHU領域の影響が考えられる。理論の紹介のあとに、オリオンA分子雲のコアにそれを適用し、星の質量およびIMFの見積もりを行う。本発表はNakano T., Hasegawa T., Norman C. (1995)のレビューである。

局所星間物質内におけるHとHeの非平衡イオン化状態について

柴田 友

この発表は参考文献1)のレビューである。それまでのLISMに関する研究では、LISMを通り抜けてくる光の吸収線を観測することで、その組成などの研究が進められていた。理論分野でもイオンが平衡状態にあるとして計算する研究により観測結果が説明できていた。しかし、LISMの平衡状態の根拠であった超紫外線(EUV)の放射場が想定より弱く、LISMは非平衡でないと説明できないことが分かった。そこで、この論文の研究では時間に依存した電離を扱うコードに「局所EUVの放射場」「イオンの衝突・放射」「二電子性再結合」「電荷の交換」の寄与を取り入れ、HとHeについて非平衡イオン化の計算を行い観測されたイオン化状態は非平衡な場合に再現できることを示した。非平衡である原因として超新星爆発の衝撃波による加熱が考えられ、また、局所EUVの放射や取り囲んでいる熱いプラズマの影響も大きいことが確認された。

Analytical Theory for the Initial Mass Function

ドーレマン ヤオリ

In this talk, we discuss an analytical theory for the Initial Mass Function of stellar formation, as formulated by Hennebelle & Chabrier in their paper “Analytical Theory for the Initial Mass Function: CO Clumps and Prestellar Cores” [1]. The core idea is taken from a famous work in cosmology by Press & Schechter [2]. There, the mass function of dark haloes collapsing from the intergalactic medium is calculated by means of statistical methods. P&S use a gravitational collapse criterion defined by a certain fixed critical density (i.e. independent of any parameters). In our case, we use a similar statistical method, but we employ thermal and turbulent collapse criteria, in accordance with results from numerical simulations of supersonic turbulence in molecular clouds. Though our model is simple, our results are in good correspondence with the observationally derived IMF. In particular, the transition between the different regimes of the IMF - a power-law at large scales and an exponential cut-off around the characteristic mass for gravitational collapse - is well-reproduced. From our results we conclude that supersonic turbulence promotes the formation of both massive stars and brown dwarfs, but it has an overall negative impact on star formation, decreasing the star formation efficiency.

大質量分子雲中での星形成の物理〜初期質量関数(IMF)起源の解明を目指して〜

佐々木 明

今現在観測されている星のIMFを説明できるか否かは、我々が宇宙のありようを理解しているかどうか、という根本にかかわる重大な問題だと言えるだろう。IMFの起源を理論的に解明するには、様々な質量の星の形成を同時に扱い、その過程を調べる必要がある。このためには計算機のパワーが要求されることから、大質量(太陽質量の数十倍程度)分子雲中での星形成を、分子雲中の最小ジーンズ質量以上の分解能でシミュレーションし、IMFなど、観測と比較可能な""星についての統計的な量""を求める研究が始まったのは近年のことである。本発表では、近年の研究成果を概観したのち、国立天文台の斎藤貴之(学振特別研究員)が開発したN体/SPHシミュレーションコードASURAを用いてさらに大質量な分子雲の形成を調べる発表者の取り組みについて紹介する。

原始ガス雲における磁場の散逸

土井 健太郎

第一世代星の形成において重要となる磁場の散逸の数値計算を行なったMaki & Susa(2004)の紹介をする。第一世代星の形成の理論によれば、現在の星形成とは異なり、質量降着率が数桁程度大きいため、大質量星となると予想される。しかし質量降着の最終段階では角運動量によって円盤が形成され、星の表面まで質量が降着するには角運動量の輸送が重要になる。そのメカニズムの1つとして磁気回転不安定性(MRI)があるが、降着円盤の磁場が弱すぎるとMRIは起きない。この論文では原始ガス雲の電離度の進化を計算する事により初期に存在した微弱な磁場がどの程度降着円盤まで持ち込まれるかを調べている。その結果、磁場は常にガスに凍結し、すべて円盤に持ち込まれることがわかった。この結果を用いると現在予想されている最も大きな種磁場を想定すれば、第一世代の星形成においてもMRIは重要となりうることがわかった。

































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