「ケーキ」

 料理は結構好きだ。そこそこ上手だと自負している。対照的に姉は下手くそと呼んで差し支えないような腕前であった。だから、二人で留守番をする時は僕が作る人で、姉がただ食べるだけの人であった。一度姉に昼食の制作を依頼したところ、カレー粉しか入っていないドライカレーを作ってくれた。涙が出た。でも、涙の塩程度では塩も胡椒も入っていないドライカレーの味を補う事は出来なかった。

 そんな姉がある日ケーキを作ると言い出した。彼女が高校生の時である。要するにずっと昔の話だ。友達に作って持っていくつもりらしい。僕と母親は横で心配そうに眺めながら「もうすこしあわだてたまへ」などとアドバイスしたりしていた。うちの家族は血のつながり方がはっきりしている。僕はおそらく母親が腹を痛めて産んだ子供であろう。対して姉はまちがいなく父親から生まれたのだ。父親が腹を痛めて産んだのだ。普段の言動ならびに料理の腕前など多くの状況証拠がそのことを物語っている。

 そんな思索に耽っている間にケーキが焼きあがった。なんか膨らんでない。ちょっと危険な感じのするケーキである。その意見を姉に伝えたところ、彼女はいたく憤慨し、「味はいいかもしれない。食べてから文句を言え」などとのたまった。もっともな意見ではある。おいしそうには見えないが・・・。僕は恐る恐るそのちょっと危険な感じで威圧感を放つケーキを一かけ口に運んだ。勇気凛々である。
 


・・・・


 


 まずい・・。てゆーか、しょっぱい。 とぅ〜 そるてぃ〜。めっちゃまずい。
大体のからくりは分かった。彼女は間違ったらしい。塩と砂糖を・・・。つまり、そのケーキは塩を80gほど含有していたことになる。
 
 


塩と砂糖なんか間違うかぁ普通?


 






僕が姉に向かって叫んだせりふである。
意外と間違うということを知ったのは最近のことだった。

この話の続きは珈琲たいむでどぞ。


モドル

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