「常連のいる店」

 僕は常連のいる店が嫌いだ。他の客の「ナニコノヒト一見さん?」って視線がたまらない。そんなに常連ってやつはエライのか?店の人の、こちらをまったく無視して常連さんとコレミヨガシに愉しげに話す態度もイタダケナイ。

 さらに言えば、僕は頑固おやぢのいる店も嫌いである。客の注文を聞かなかったり、注文に文句つけたり、突然説教しだしたり。ナンか勘違いしてるとしか思えない。たまにそーゆーおやぢを持ち上げるような企画をテレビで見かけると非常に腹立たしい。

 さて、ある夏の日のコト。僕は帰省しておりその夜は久しぶりに会った友人の車の助手席に座っていた。既に就職していた友人は親切にもカワイソウなガクセイくんである僕に夕食を奢ってくれるという。ありがたい話だ。断る理由はナイ。

 上機嫌でお互いの近況等を話しているとなんと友人はラーメン屋の前に車を止めるではないか。もしかして奢ってくれるのってラーメン?

YES, YES, YES.

 僕はラーメンが嫌いだ。いや、嫌いというほどのコトはない。特に好きではないだけだ。僕が嫌いなのはラーメン通のヤツラである。なぜヤツラは数ある料理のナカでラーメンを選び、そしてラーメンについてあんなにアツク語れるのだ?僕はラーメンが料理のナカで抜きん出た存在であるという理由がわからない。そもそもラーメンに特化した味覚ってモノが考えづらい。ラーメンについてアツク語るなら他の料理についても同様に語ってもらいたいもんだ。イイヤナニモカタランデイイ。

 とは言え、奢ってくれる以上文句はナイ。僕は友人について素直に店内へと入った。しかし、カウンターに座るなり友人は言ったのである。

「いつものヤツ」

めっちゃ常連やんけコイツ。しかも店のおやぢは黙って「あんた注文は?」って顔でコチラを見ている。オノレ。それならコッチにも考えがある。僕はスマシタ顔で注文した。

「いつものヤツ」

 僕はおやぢが一瞬「え!!」という表情を浮かべたのを見逃さなかった。フハハ勝った。

 しばらくして僕と友人の前にラーメンのどんぶりがドンっと置かれた。勝利の余韻に浸っていた僕は、イイキになって目の前のラーメンを指差しながら、

「で、結局なんなんですか、このラーメン?」

と尋ねた。おやぢはニヤリと笑いながら

「いつものヤツだよ」

と答えた。

 僕は常連のいる店も頑固おやぢも嫌いだ。 


モドル

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