その晩は12月初旬にしては記録的な大雪の夜であった。何と一晩に50センチも積もったのだ。まいったね。また車埋まっちゃったよ。今度発掘しないと。考古学者になったつもりはないのだが・・。まぁ、要するに大雪で寒かったのだ。僕はまさに日付が変らんとするころ、家路を急いでいた。獣道のように細い雪の踏み固められた部分を歩いていた。大学構内は人影も無く非常にさびしい様子を呈していた。
僕は、獣道の先に女の人が一人立っていることに気付いた。寒いのに何も無いところで何をしているのであろうか?他人のことには無関心な僕は気にせずにずんずん歩いた。だんだん彼女との距離が縮まり、彼女の奇行が目に付きだした。彼女は一心不乱に雪をかさの先で突き刺しているのだ。さっきからずっと・・・。奇行である。久しぶりに見ちゃった。脇の締り具合といい、隙の無い自然な立ち方といい見事なフォームである。相当突き慣れた人だと思われる。若いのにたいしたもんじゃ。 常軌を逸した行動であるが故に奇行という。故に、次の展開も読めない。次に刺されるのは僕かもしれない・・・。ちょっと怖くなってきたが獣道である。ずんずん彼女との距離は縮まっていく。そして遂に向こうもこちらに気付いた。はっとした顔でこちらを振り向く。彼女は逃げるように去っていった。ほっ。
彼女の立っていた位置にたどり着いた。奇行の目的を知りたい。突きまくられた雪面を見る。 おぉ!めるへん! 年賀状の図案かな? |
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