「旅行記」

 学部生の頃友人二人とイギリスに遊びに行った。イギリスに住む父親を訪ねるついでである。宿泊費を浮かす事が出来るが君達もどうだい?そんな感じ。現地に着きさえすれば父の金を適当にチョロマカスことのできる僕と違い友人二人は資金に限りがあったためなるべく安いチケットを探す事に。必死でえぃびぃロードをめくった(友人ソノ1)結果、学生限定でヨーロッパ往復 + 1flight で 68000 円という破格のブツを発見。モチロン大韓航空、ソウル経由。即断。

 さて、こうなると問題は 1flight の使い道である。基本的にはヨーロッパ 5 都市間(ロンドン、パリ、チューリッヒ、etc.)で使用できるので、日本からトライアングルを描くように飛べば効率が良いのだが、あいにく父のアパートをベースとして活動(金の問題)するという我々の滞在型旅行には向かない。かといってせっかく付いてくるものを使わないのもなんだかなぁの小市民的発想。

 そこで、途中で一回どこかの都市へ飛び今度は陸路で戻って来るという計画に。ユーロスターに乗りたいという強い希望(友人ソノ2)も考慮しつつ。だれも行ったことが無いというだけの理由でチューリッヒを選択。2泊3日くらいでいいやねってことで。帰りはブリュッセルまで夜行に乗ってそこからユーロスターでドーバーを越える。

 途中をすっとばしてチューリッヒ到着したところから。予約していたホテルへ向かう。駅の近くではあるがムードがとっても裏通り。しかもその裏通りの入り口の所で黒人の方々がたむろしている。金満日本人としてはやはり怖い。ならもっと良いホテルに泊まれよと言われても貧乏学生にそれはチトつらい。ホテルの二つとなりにナンだかアヤシイお店を発見。ナンだろと思ってショーウィンドウを覗き込むとドウ見てもおとなのおもちゃやさん。おもち屋にあらず。不安な滑り出し。

 ハラヘリホロハレだったので適当に調べてチーズフォンデュを食べに行く。ちとトラブルもあったがオイシクいただき、帰る頃には 23:00 過ぎ。お店に入る前とは通りの雰囲気ガラっと変わり、う〜んな感じ。日本人観光客も見当たらず。いたからドウってわけでもないのだが。そそくさとホテルへ。帰り道妙なイタリア人にからまれそうになるが無視して Go Go!! 友人達は係わり合いになってなるものかとの気合をみなぎらせて既にずっと先。いーけどさ。

 ホテルに帰ってくると急に冷蔵庫の中のオチャケが気になり出す我々。普通は飲んだものをチェックするマークシートもどきが置いてあるものだがそれも見当たらない。もしかしてサービス?そんなわきゃないのだがチェックする機構が無いということはサービスと同じである、用意しないホテルが悪い、と強引な見解を述べて少々お酒をいただく。ホテルがわが意外に抜け目が無かったときのため今日のところはコレくらいにしておいてやろうのココロ。

 二日目は取りあえず帰りのブリュッセルまでの夜行を予約しに駅へ。緑の窓口に対応する場所には英語とドイツ語とイタリア語だかフランス語だかの3箇所の受け付け。常識的に英語のところへ。もう列車も決めてあるので「こいつを3人分予約したいっす」と言うだけ。カンタンだね。その見通しが甘かった。「booked up」なんて悲しい言葉でしょう。話しがヤヤコシくなってくると1歩下がってしまう控えめな御婦人方。とくに片方はすっかり僕に任せる気らしい。チクショ、友達ガイの無いお方。クシェットがダメなら寝台でどうだ!チト高くなるが。しかしそれも予約で一杯。ならば一等に空きはないのかと尋ねる僕に、窓口のおっさんニヤリと笑って君達にそんなお金があるのかい?あらへんわ!!しかし、予約済みのユーロスターは待ってはくれない。仕方が無いので一本早い列車を予約した。夜行にあらず。これではブリュッセル駅にホテルも取れないような夜中に到着してしまい、駅で一晩バーチャル浮浪者を体験する事になってしまうのだが、背に腹はかえられず。

 イロイロやってホテルに戻ると冷蔵庫の上に不信な紙を発見。昨日飲んだモノがチェックされ補充されている。掃除の時だな。まぁ、しょうがない。コレも予想のうちだ。しかしである、明日はチェックアウトだ。もはや我々がナニを飲もうとテキにチェックする機会無し。宴会突入。冷蔵庫はほとんど空に。翌朝、さらに余っていたブランディーのミニボトルも友人と取り合いを演じながらかばんに放り込む。もう一人の友人が「ねぇ、やめなよぉ」なんて言っているが彼女はブランディーに興味が無いだけ。キクミミ持たず。ソワソワとチェックアウト。テキが奇襲攻撃、「トラトラトラ、冷蔵庫の中のモノをナニかお飲みになられましたか?」しかし、伊達にウソツキを20数年もやっていたわけではない。「ア・ボトル・オブ・コーク & オレンジジュース」落ち着き払って答える僕。ナニも飲みませんでしたではウソっぽい。ホンノ少しの真実、これがコツ。そもそも我々がナニを飲んだのかを全て記憶する事は難しい、多すぎて。キライな酒以外全て、コレが正解。疑いのココロを持たぬ好フロントにお金を払い別れを告げ、ホテルを出たらダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。

 そういえばクシェットや寝台に拘らなくてもオープンてのがあったよな、ってことでまた駅に向かう。やはりブリュッセルでのバーチャル浮浪者は危険すぎる気がする。オープンは空きがあるか?と尋ねると、オープンよりもクシェットの方が良いんでない?と窓口のお姉さん。ソレは予約がいっぱいでしょ、と指摘すると、あらホント、ナンで知ってるの?と言われて事情を話し予約の変更。チコっと手数料払うもコレで安心。美術館などをウロウロ。ムンクなんかを見て、叫びほどのインパクトのある作品はないねぇ、とこき下ろす者二人。ウチ一人は僕。夜に駅に行き無事夜行にに乗り込む。ミニボトルで乾杯。


モドル

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