「弱肉強食」

 中学の部活の時の話である。我々は釣りをしていた。といっても釣り部だったわけではない。剣道部である。名目は精神修行。釣りで集中力を身に付けるのだ。ルアーで精神修行?

 近所の池も琵琶湖も何処かの誰かがブラックバスを放したせいで、バス釣りが可能となっていた。意識的に生態系を崩そうとするのはいったいどんな人間なのだろう?けしからん話である。そんなことを考えている間にブラックバスが2匹釣れた。

 2匹・・・つがいである確率は2分の1か。そんな考えが頭を過る。いけません。そう思いながらも自転車にまたがり、皆の目を盗んで近くの小さな池に行く。この池ではフナぐらいしか釣れない。

 そもそもつがいじゃないかもしれない。つがいだとしても、2匹ぐらいじゃ何も変らないさ。そんな言い訳を自分にしながら2匹のブラックバスをその池に放した。

 一年後、その池ではブラックバスしか釣れなくなった。心の中で、絶滅したであろうフナ達に詫びながら、自然淘汰なのだ、と自分に言い聞かせて明るくバス釣りを楽しんだ。 


モドル

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