「ぼむ」

 それは他愛無いいたずらだったのだ。Mac の System folder に Startupscreen と言う名の画像ファイルを入れておけば、起動時にその画像が画面に表示されることを知ってしまった僕は、sad mac (泣き顔の mac 致命的なエラーが発生した場合に表示されるといわれているが実は macer なら結構お目にかかれる。)をリアルに書き、ちょっと爆発感なんか出してみたりして、赤字で THIS SYSTEM IS BROKEN と書いた画像を、自分の研究室の Mac や他の研究室の Mac に入れまくったのである。良くあるいたずらではないか。

 しかし、翌日事件は起きた。理学部に『爆弾仕掛けたよん♪』などという内容の脅迫状が届いたのだ。脅迫状の内容は公表されなかったので詳しくは知らない。公表されなかったということはきっと特定の人物が実名でやり玉に挙げられていたのではないかという推測が出来るだけである。当然、その日から理学部は厳戒体制となった。出入りのチェック、監視カメラの設置等々、ま、穴だらけの厳戒体制ではあったのだが。

 これを知った僕は当然青ざめた、デスラー総統ほどではないにしろ真っ青になった。start up screen を変更しまくった次の日に脅迫状なんて。しかも、僕が描いた絵はマックが爆発している様子を描いたものだった。もし、関連を疑われたらどうしよう・・
その心配は、それぞれの研究室に進入する際に協力してくれたお友達くん達が適当にごまかしてくれたおかげで現実にはならなかった。しかし、僕は後日この警戒網に引っかかることになる。

 雨が強く降っていたのだ。気温も異常に低かった。そして理学部2号館の玄関前では寒さに凍えた猫が雨宿りしていた。僕はしばらく暖かいところで眠らせてあげようと思って猫を抱いて2号館の玄関を入ろうとした。その時どこからかくぐもった声の放送が聞こえてきた。「猫はだめです、猫は!!」。爆弾騒ぎでそこに監視カメラがつけられていたことをその時初めて知った。


モドル

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