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Date:  Wed, 1 Dec 1999 20:22:42 +0900
From:  Habe <habe@phys.hokudai.ac.jp>
Subject:  [view 000322] Fwd:[reform:02409] 11/27杉野・文部省大学改革推進室長講演
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Message-Id:  <19991201202242.Postino-015640@astro1.phys.hokudai.ac.jp>
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reform-MLの皆様

 野崎さん、麓さんなどの論議にふれて、この2、3年間まともに教育に取り組めて
いない自分を反省しております(「改革」関連の多忙化もその一要因ですが)。
 reformの情報を活用させてもらうだけでは気が引けるので、少しは貢献しようと思
い、11月27日(土)に金沢大学で開催された杉野剛・文部省大学改革推進室長の
講演の要旨をまとめてみました。小見出しは私が任意に付し、表現は少々異なるとこ
ろもあるかと思いますが、趣旨は誤解していないと思います。当日は200名を超え
る教職員が出席し、関心の高さを示しました。杉野氏の講演は1時間ほどのものでし
たが、原稿もレジュメもなしでたいへん慣れた様子でしたから、おそらくかなりの大
学等で同趣旨の話をされているように思われます。質問時間は30分弱で、質疑応答
は時間の制約を理由に途中で打ち切られました。

     11月30日(火)  岡田正則(金沢大学教育学部)

────────

平成11年度金沢大学フォーラム(第1回)
──国立大学の独立行政法人化問題説明会
1999年11月27日(土)
 講師:杉野 剛 氏
 (文部省高等教育局大学課大学改革推進室長)

1.はじめに
 独立行政法人化を3つの側面から見ていく。すなわち、政府のスリム化、新しいル
ールの必要性、官なのか民なのか、である。

2.政府の方針
 国立大学の独立行政法人化については、4月の閣議決定で「平成15年までに結論
を得る」、その際に「大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として」位置づけ
ることとされた。これが政府の公約である。すでに89機関が平成13年度から独立
行政法人になることが決まっており、現在そのための法案が国会審議中である。

3.なぜ3つの側面か(独立行政法人化が出てきた経緯)
 政府のスリム化は、まず民営化と地方移管によって進められた。この対象にできな
かったものが今回の独法化の対象である。ただし、単に国から切り離すのではなく、
それらにふさわしい運営ルールを適用する点に新しさがある。

4.政府のスリム化
 平成13年から10年間で国の公務員を25%減らすことが政府の公約である。橋
本内閣では10%だったが、小渕首相が総裁選で20%減を公約し、さらに小沢自由
党党首との連立時の協議により25%に引き上げられた。25%は数字も大きいこと
に加え、純減である点が衝撃的である。これまでは定削といっても別定員による補充
がある程度あったし、特に国立大学の教官定員は増え続けてきたが、今回はそうでは
ない。
 国の各組織は10%削減という計画だが、これでは足りないから独法化が出てきた
。国立で残ればこの10%をかぶる。削減対象となる国家公務員は55万人、その2
5%は約14万人である。国立大学は12万5千人であり、これに手をつけなければ
25%は達成できない。つまり、国立大学の対応が内閣の命運を担っているのである
。こうして「ぜひ独法になってくれ」というプレッシャーが、内閣からも各省庁から
もかかってくることになる。
 定削の問題と大学の設置形態とは全く別問題である。ここでは後者から真剣に考え
たい。

5.新しいルール
 独立行政法人通則法では大臣が5年ごとに中期目標を指示することになっている。
法人は、予算・給与・人事等を5年間は自由にやり、5年後に評価を受ける。業績が
悪い場合には長の解任も行われる。現行法制の下では、文部大臣は大学に対してどん
な命令でも出せる強力な指揮監督権を有しているが、独法化すれば、大学は指示後5
年間フリーに活動できる。
 通則法にはメリットもデメリットもある。メリットとは、5年間は予算等について
自由に運営できる点であり、規制緩和である。しかし、デメリットは大学の自主性、
大学の自治を脅かすおそれがある。それゆえ、特例を設けることが必要になる。第一
に、大臣の指示によってではなく大学が自律的に目標をつくるしくみ、第二に、大学
人が自ら評価するシステム、第三に、人事、特に学長解任等についての歯止めが必要
である。
 「現行形態でも独法でもない第三の道はないのか」というご質問をよく受ける。し
かしこれは危険な道である。一つには、国立大学だけがレディメイドの2つの道を拒
否して、オーダーメイドを求めれば、霞が関の中では孤立してしまう。二つには、「
独法では国の関与が変わらないからいやだ」という意見に対しては、「それなら民営
化せよ」というのが永田町(自民党)と大手町(経済界)の雰囲気である。したがっ
て、文部省としては、レディメイドの中でできるだけオーダーメイドの気持ちに近づ
ける、という提案を今しているのである。
 「独法は国立大学を考慮した制度ではない」という質問もよく受ける。しかし、今
の国立大学という設置形態も大学用ではない。たとえば、毎年の概算要求、予算の繰
越し禁止などをみればこの点は明らかである。
 「文部省案は本当に実現するのか」という質問も出される。「大学の自主性が守ら
れるのか」、「大学の教育・研究の発展に寄与するものか」という点が大事であって
、政府が特例を認めてくれない場合は、その時点で我々としても腹をくくることにな
る。

6.官か民か
 民営化・地方移管できないものを独法化するのであるから、独法化は民営化ではな
い。金沢大学が(一般的に国立大学が)この地で果たしてきた役割は今後とも維持さ
れなければならないし、また、教育の機会均等という点からは低い学費が維持されな
ければならない。こうした面を考慮して、独法は独立採算を前提とせず、政府が運営
費を支出することになっているのである。
 たしかに、この運営費が減らされないという保障はない。しかし、今の設置形態で
も減らされないという保障はないのである。現在、大学の歳入のうち約4割が自己収
入、6割が国から来ているが、後者は、昭和40年代には80%台、昭和50年代に
は70%台であって、現在では60%を切るところにまで下がってきた。本当にお金
を増やすためには、大学がよい教育・よい研究を行っていることを証明し、これをP
Rしなければならない。国立大学に投資してもらえるようにアピールしなければなら
ないのである。


<質問1>
 独法化してもスリム化につながらないが、それでも独法化する意味はあるのか。
<杉野>
 たとえばイギリスのエージェンシーは独立行政法人ではないが、新しいフールの下
での運営に移された点に意義があるとみなされている。

<質問2>
 (1)国立大学を独法化すれば、他の省庁は定員削減を免れることになるのか。
 (2)年度計画ごとの評価もあるから5年間フリーということはないのではないか
。また、給与等には国営企業の場合と異なって中期計画の拘束があるはずだ。
<杉野>
 (1)政府の公約についての最悪のシナリオは、10%の削減もかぶり、さらに2
5%の対象とされることである。そこは交渉によって、独法になるまで定削率を下げ
るように働きかける。(注──質問に対応していない?)
 (2)中期計画がなくていいとはいえない。大学にとってはメリットもある。大臣
の認可という裏付けを得て、5年間の自由が保障されることである。また、一つの大
きな組織を動かすのに目標は必要である。予算の繰越しが可能になるし、年次計画ご
とにしっかりとした評価を行うことは事実上不可能なので、5年間の自由は保障され
る。

<質問3>
 「自由」というがそれは予算制約の範囲内でのことであり、運営交付金での増額が
ない限り自由度は増えない。現在でも繰越しできるほどの予算はない。国民への説得
が大事なら、今の形態のままで時間をかけて理解を得る方法をとるべきではないか。
<杉野>
 お気持ちはわかるが、世の中の国立大学を見る目がきびしい。「定削もなしで待っ
てくれ」という主張に支持が得られるか、疑問だ。予算増の保障はない。主張はする
が、どうなるかわからない。

<質問4>
 (1)独法化による効率化というが、労働条件がバラ色になるのか。
 (2)大学が「独立」すれば、文部省のその部分は不要になる。天下り先を増やす
ための改革か。
<杉野>
 (1)バラ色とはいえない。しかし、たとえば給与決定が弾力的に行えるようにな
り、面倒な事務手続がなくなる。とはいえ、国費を使うからには、人員を増やすこと
や給与水準を現在よりも高くすることはできないだろう。いろいろな圧力がかかるこ
とが予想されるからである。
 (2)そうではない。大学と文部省との間には緊張関係が必要である。
 
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Asao Habe