独立行政法人問題
私学の立場からの意見を求められているので、個人的意見ですが述べさせていただき
ます。
時間がなくて印象批評的ですがお許しください。
一つは、本当に独立しているかということです。これはすでに多くの方々の意見があ
ります。私大との関係でいえば、今の私立大学よりひどい形です。
文部大臣の監督だけでなく、様々な計画についても認可を受けなければならないうえ
に、計画期間終了時にも評価を受ける話です。私大の経営者はこの動きをみているの
でしょう。国立がそうなれば私立はもっとそうなるでしょう。ちなみに公立の多くの
大学は、現在でも知事部局が予算編成をして大学にはおろしてくるようですので、部
分的な先例はあります。日本の大学全体がもっと悪くなるということを国立の方も
もっといっていくべきと思っています。(各大学のアピールをよく読んでいないで書
いています。すみません。)
国立大学が法人格を持つということと、今回の独立行政法人化とは本質的に別のもの
と考えるべきです。現在あるさまざまな特殊法人などと比べてもこの点はあまりにひ
どい規定になっているのではないでしょうか。
これに関連してもう一つ、個人的関心でもありますが、今回の独立行政法人化は、大
学自体が法人格を持つのですか。それとも、各大学に設置者である法人を作って、そ
の法人の設置する大学という形を取るのですか。文部省のいっていることをみている
と(新聞報道の範囲で、さらに頭に残っているだけの話ですが)前者のように聞こえ
ます。
戦前の私立大学は大学自体が法人格を持つことが本則でした。大学設置を目的とする
法人が大学を設置することも認められていましたが、これは例外でした。これに対し
戦後の改革では、すべて学校法人が設置する形になったのです。戦後の大学・学校は
それに限らずすべて法人格を持っていません。これらは同じ学校教育法で規定してい
ます。そして設置者については、国立は国立学校設置法など、公立については地方自
治法など、私立学校については私立学校法でそれぞれ規定しています。もし前者であ
れば、こうした原則を崩すことになります。
今のところわたしは学校が法人格を持たない今日の方式がいいのかどうか判断を迷っ
ていますが、戦前からの経緯を考えると、その原則を簡単に投げ捨てるのはどうかと
思うのです。(この経緯については、拙稿「戦前期私立学校法制の研究」工学院大学
共通課程研究論叢第35−1号1997年で、考えてみました)
独立行政法人の考えは、国立大学に対する国の設置者としての責任を放棄しながら、
コントロ−ルだけは手放さないというものです。この点での批判を是非強く押し出し
てほしいと考えます。
柴崎氏の論考への批判の準備はないですが、国立と私大の不公平はもちろん是正すべ
きですが、これは大幅な予算増によって行うべきで、国立と私立の予算のとりっこで
は解決しないことは明らかです。諸外国と比べ大学予算の少ないことをもっと問題に
すべきでしょう。柴崎氏は、ほんとうに日本の大学の不均衡を問題にしたいなら、予
算のことは最後に付け足すのではなく、まずそれを要求すべきです。日本の大学が私
立も含めて、貧困な予算の中で健闘しているという事実をまず評価すべきではないで
しょうか。柴崎氏はこれを知らないのか、知っていてもふれないのか、いずれにして
も大学問題を論ずる基本的なスタンスに疑問を持ちます。
工学院大学 蔵原清人
Asao Habe